清原が怒った。
昨日のプロ野球交流戦、巨人−オリックスでオリックス守護神・山口の147キロの直球が清原の頭部をもろに直撃した。殺気をみなぎらせヘルメットを叩きつけると、悪鬼の形相でずんずんと山口を殴らんばかりにむかっていった。
大乱闘にはならなかったが、清原の気合がジャイアンツベンチに乗り移ったのか、負け試合と思われた試合を同点引き分けに持ち込んだのだ。私が山口投手だったら、あの清原の悪鬼顔を見た途端、俊敏に逃げ出す。「逃げるも八卦」であり、やりあってもあの清原には適わないと判断するからだ。

どうしようもない話だが、幼少の頃よりの素行・態度の悪さから、トラブルメーカーになる機会もあり、乱闘に遭遇する事が間々あった。(現在はこんな事をしたら、失礼だと分かる事はしない。)そんな中、自信があるのが逃げ足の早さである。形勢不利と見るや、兎に角一目散にあらゆる手段を使って逃げる。逃げられた側の悔しさはひとしおで、心理状況的ではまさに「逃げるが勝ち」なのだ。

当時を思い出し実感するのは、孫子の兵法に名高い「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」という格言だ。敵の力量、数的劣勢、心理状況を瞬時に判断し、この戦が物理的に勝てないと判断した場合「戦わない」選択をすれば負けないのであり、心理的には勝てる場合もあるのだ。その裏も然りで、勝てる戦と判断するためには、やはり己を知り、敵を知る事が不可欠なのだ。


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