東北新幹線に乗ると、座席にJRの旅雑誌「トランヴェール」が置いてある。表紙は青空のもと燦然と構える新青森駅のイラスト。
青森は東北新幹線の全線開通で賑わっていると報じられているが、どうってことはない。新青森駅に降り立つと周りは閑散とした住宅地。都営浅草線の終着駅、西馬込のほうがよほど賑わっている。こんな駅に終点の座を奪われ、通過駅に滑り落ちた八戸の心情は決して穏やかとは言えない。
雪原と化した田畑と鉛色の空。図画の宿題で風景画を描けと言われたら2分で終わるような、白とグレーの景色が延々と続く。コンビニの鮮やかさが目に痛い。
そんな八戸へ、RainbowAppsスクールは上陸した。とある会社の研修プログラムとしての実施である。
受講者は十数名。雇われて間もないプログラマ初心者たち。みな若い。数ヶ月前まで求職者だった面々。やっと手にした職場での研修だ。吸収したいという意欲が違う。
中途半端に都会で反応が鈍っている仙台人とは危機感が比べ物にならない。受講生たちは同じ境遇にあるため、仲間意識も強い。
この手ごたえを根拠に、1か月の講座の最終日だった今日、アプリ自慢を行った。
一番手の受講生が披露したのは、画像が上から降ってくる癒し系アプリ。シャボンのような輪に包まれた江頭がふわりふわりと降ってくる。雪が降り続ける北国では、何か別なものさえ降ってくれば、江頭でも癒しになるというのか。
二番手は位置情報アプリ。現在地をMAPで示し、テキストを記入することで、地図上にコメントを残せる。広大な東北では地図に記録を残しながら進まないと、どんな罠があるかわからない。筆者も昨晩、真っ暗な八戸駅前でうっかり光り輝く自販機に誘われ、「いろはす」を130円で買ってしまった。地図に「買うな危険」とメモっておかないと、また買ってしまいそうだ。
三番手はブロック崩し。アプリが繰り出す恥ずかしい質問に、音声で答えてからゲームがスタートする。ゲーム中に敵キャラが、プレイヤーの恥ずかしい回答を口走る。早く倒さないと、誰もがネガティブな噂に広めたがる東北では危険すぎる。狭いコミュニティでのリアルなスリルをゲームに取り入れるとは、なかなかのツワモノだ。
四番手はどの場所のどんな位置からどんな写真を撮ったかがわかるアプリ。
「ワイィ・・・!ナァ、こっだ写真どっがら撮ったんだジャ!」と、足引っ張りな津軽人に難癖をつけられても、これで整然と答えられる。津軽とは文化の異なる八戸人が生きる知恵だ。
五番手は講座で覚えたベースアプリ2本をカスタマイズ。玉ころがしアプリには、画像と音声を加えた。地方のゲーセンにあれば「まんずCOOLだべな」と評されるに違いない。時計アプリには、画像をカスタマイズし、タイマー機能を反映。待ち遠しい春までひたすら時を刻み続ける東北は、時計で楽しむ文化が必要だ。
六番手も時計アプリのカスタマイズ。年末までのカウントダウンが表示される。今年もあと3日と10時間だ。
続いて自作のジャンケンアプリ。デパートの屋上とかあったアレだ。きっと青森では現役に違いない。
七番手。アプリ名「ぬりえもん」。色を消そうとすると絵のラインも消えてしまう。なんでも真っ白に消してしまう冬の青森そのものだ。素朴で悲痛な儚さだ。
八番手は「動体視力チェッカー」。看板に出るお題の指示にあわせて画面をタッチする。トリッキーなお題の連発には、東北人特有のひねくれ度がいかんなく発揮されている。特に東北を知らない関西人には、来訪する際はこのアプリで東北人気質を予習することをお勧めする。
動体視力を測ると、自分のランクが動物名でつけられる。ちなみに開発者曰く、動きの速い動物は時速200kmのハヤブサで、尊敬できる動物らしい。来年お目見えする東北新幹線E5系新幹線も同名だということに、筆者はいま気付いた。八戸で新幹線の全線開通を讃えるには、これくらい遠回りしないと危険なのである。
なんと8名。しかし驚くべきはこれだけではない。
「楽しかった」「ぜひリリースまで個人でも頑張りたい」「Macを買ってしまった」などなど、ポジティブな感想の連続である。東北ではちょっとした事件である。これがバスが1日1本しかないオフィスに、RainbowAppsという遺伝を注入したことで起こったことなのだ。
ローカルにいないと描けないアプリがある。
寒波に襲われるニューヨーカーたちの心をつかむのは、北国の彼らが心情を描いたアプリなのかもしれない。そう思い調べてみたら、この時期のニューヨークの気温は八戸とほぼ同じだ。講師のイマイは抜かりがない。最後のブレイクタイム講座で、言語ローカライズのノウハウを伝授することを忘れていなかった。
今日だけはあえて言おう。東北で先に抜きん出るは仙台ではない。八戸だ。その暁には、今日の発表者8人は「八戸の八本槍」として、語り継がれるべき存在だろう。
まずはこの雪原に、情熱の一歩が踏み出された。だが、急いでほしい。美人すぎる市議の賞味期限は、そんなに長いとは思えないのだ。
(寄稿/RainbowAppsスクールiPhoneアプリ講座八戸校
原 亮氏)
青森は東北新幹線の全線開通で賑わっていると報じられているが、どうってことはない。新青森駅に降り立つと周りは閑散とした住宅地。都営浅草線の終着駅、西馬込のほうがよほど賑わっている。こんな駅に終点の座を奪われ、通過駅に滑り落ちた八戸の心情は決して穏やかとは言えない。
雪原と化した田畑と鉛色の空。図画の宿題で風景画を描けと言われたら2分で終わるような、白とグレーの景色が延々と続く。コンビニの鮮やかさが目に痛い。
そんな八戸へ、RainbowAppsスクールは上陸した。とある会社の研修プログラムとしての実施である。
受講者は十数名。雇われて間もないプログラマ初心者たち。みな若い。数ヶ月前まで求職者だった面々。やっと手にした職場での研修だ。吸収したいという意欲が違う。
中途半端に都会で反応が鈍っている仙台人とは危機感が比べ物にならない。受講生たちは同じ境遇にあるため、仲間意識も強い。
この手ごたえを根拠に、1か月の講座の最終日だった今日、アプリ自慢を行った。
一番手の受講生が披露したのは、画像が上から降ってくる癒し系アプリ。シャボンのような輪に包まれた江頭がふわりふわりと降ってくる。雪が降り続ける北国では、何か別なものさえ降ってくれば、江頭でも癒しになるというのか。
二番手は位置情報アプリ。現在地をMAPで示し、テキストを記入することで、地図上にコメントを残せる。広大な東北では地図に記録を残しながら進まないと、どんな罠があるかわからない。筆者も昨晩、真っ暗な八戸駅前でうっかり光り輝く自販機に誘われ、「いろはす」を130円で買ってしまった。地図に「買うな危険」とメモっておかないと、また買ってしまいそうだ。
三番手はブロック崩し。アプリが繰り出す恥ずかしい質問に、音声で答えてからゲームがスタートする。ゲーム中に敵キャラが、プレイヤーの恥ずかしい回答を口走る。早く倒さないと、誰もがネガティブな噂に広めたがる東北では危険すぎる。狭いコミュニティでのリアルなスリルをゲームに取り入れるとは、なかなかのツワモノだ。
四番手はどの場所のどんな位置からどんな写真を撮ったかがわかるアプリ。
「ワイィ・・・!ナァ、こっだ写真どっがら撮ったんだジャ!」と、足引っ張りな津軽人に難癖をつけられても、これで整然と答えられる。津軽とは文化の異なる八戸人が生きる知恵だ。
五番手は講座で覚えたベースアプリ2本をカスタマイズ。玉ころがしアプリには、画像と音声を加えた。地方のゲーセンにあれば「まんずCOOLだべな」と評されるに違いない。時計アプリには、画像をカスタマイズし、タイマー機能を反映。待ち遠しい春までひたすら時を刻み続ける東北は、時計で楽しむ文化が必要だ。
六番手も時計アプリのカスタマイズ。年末までのカウントダウンが表示される。今年もあと3日と10時間だ。
続いて自作のジャンケンアプリ。デパートの屋上とかあったアレだ。きっと青森では現役に違いない。
七番手。アプリ名「ぬりえもん」。色を消そうとすると絵のラインも消えてしまう。なんでも真っ白に消してしまう冬の青森そのものだ。素朴で悲痛な儚さだ。
八番手は「動体視力チェッカー」。看板に出るお題の指示にあわせて画面をタッチする。トリッキーなお題の連発には、東北人特有のひねくれ度がいかんなく発揮されている。特に東北を知らない関西人には、来訪する際はこのアプリで東北人気質を予習することをお勧めする。
動体視力を測ると、自分のランクが動物名でつけられる。ちなみに開発者曰く、動きの速い動物は時速200kmのハヤブサで、尊敬できる動物らしい。来年お目見えする東北新幹線E5系新幹線も同名だということに、筆者はいま気付いた。八戸で新幹線の全線開通を讃えるには、これくらい遠回りしないと危険なのである。
なんと8名。しかし驚くべきはこれだけではない。
「楽しかった」「ぜひリリースまで個人でも頑張りたい」「Macを買ってしまった」などなど、ポジティブな感想の連続である。東北ではちょっとした事件である。これがバスが1日1本しかないオフィスに、RainbowAppsという遺伝を注入したことで起こったことなのだ。
ローカルにいないと描けないアプリがある。
寒波に襲われるニューヨーカーたちの心をつかむのは、北国の彼らが心情を描いたアプリなのかもしれない。そう思い調べてみたら、この時期のニューヨークの気温は八戸とほぼ同じだ。講師のイマイは抜かりがない。最後のブレイクタイム講座で、言語ローカライズのノウハウを伝授することを忘れていなかった。
今日だけはあえて言おう。東北で先に抜きん出るは仙台ではない。八戸だ。その暁には、今日の発表者8人は「八戸の八本槍」として、語り継がれるべき存在だろう。
まずはこの雪原に、情熱の一歩が踏み出された。だが、急いでほしい。美人すぎる市議の賞味期限は、そんなに長いとは思えないのだ。
(寄稿/RainbowAppsスクールiPhoneアプリ講座八戸校
原 亮氏)