我が国の帆布製造の始祖として知られる初代工楽松右衛門(くらくまつえもん)。

幼少の頃から改良や発明が好きで、船乗りになった後は、それまでの脆弱な帆布に改良を加え、従来より太い糸を撚る厚地大幅物の帆布の織り上げに成功。「松右衛門帆」と呼ばれて全国の帆船に普及、明治になるまで船乗りの安全な航海を助けた。

北海道の幸、鮭を新鮮なまま上方に輸送するため、調理方を工夫した新巻鮭と鮭が傷まないよう早船の海運ルートを作ったのも他ならぬ松右衛門である。

町人の生まれだった松右衛門はこれらの功績により「工夫を楽しむ」という意味の工楽の姓を与えれ、故郷の兵庫県高砂市(1743生れ)高砂神社の境内には銅像が建てられている。

松右衛門の言葉には、現代商人(企業家)も一見の価値があるので紹介します。

「人として天下の益ならん事を計ず、碌碌として一生を過ごさんは禽獣にもおとるべし。およそ其利を窮るに、などか発明せざらん事のあるべきやはと。金銭を費し工夫せられし事少なからず。」

最期に松右衛門の登場する小説をご紹介します。
菜の花の沖〈2〉